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マルチン・ルターの小信仰問答書
Luther's Little Instruction Book (The Small Catechism of Martin Luther)
マルチン・ルター 著結城 浩 訳
1. 第一部:十戒について
父親が家族に十戒を簡潔に示すには
〔訳注:ここでのルターの番号のつけ方は、アウグスティヌスおよびラテン教会の区分法に従っています(『信仰要義』p.188)。 他の区分法では、第二の戒めとして「偶像礼拝の禁止」が入り、順に番号がずれていき、最後の二つ「第九の戒め」と「第十の戒め」が一つにまとめられて「第十の戒め」になります。聖書そのものには番号はつけられていません。〕
1.1. 第一の戒め
他の神々を神としてはいけません。
問い これはどういう意味ですか。
答え 私たちは他の何よりも唯一の神を畏れ、愛し、信頼しなければならないということです。
1.2. 第二の戒め
神の名前を誤った目的に使ってはいけません。
問い これはどういう意味ですか。
答え 私たちは神を畏れ、愛さなければなりません。ですから、神の御名を用いて呪ったり、誓ったり、呪文を唱えたり、嘘をついたり欺いたりしてはなりません。そうではなく、神を求め、神に祈り、神を賛美し、いかなる困難なときにおいても神に感謝するために、神の御名を用いなさい、という意味です。
1.3. 第三の戒め
安息日を聖なるものとして守りなさい。
問い これはどういう意味ですか。
答え 私たちは神を畏れ、愛さなければなりません。ですから、説教や神の御言葉を軽視してはいけません。そうではなく、神の言葉を聖なるものと考え、喜んで自分から耳を傾け、それを学びなさい、という意味です。
1.4. 第四の戒め
あなたのお父さんとお母さんを敬いなさい。
問い これはどういう意味ですか。
答え 私たちは神を畏れ、愛さなければなりません。ですから、両親や目上の人を馬鹿にしたり、わずらわせたりしてはいけません。そうではなくて、両親や目上の人を敬い、仕え、従い、愛し、大切な存在として扱いなさい、という意味です。
1.5. 第五の戒め
殺してはいけません。
問い これはどういう意味ですか。
答え 私たちは神を畏れ、愛さなければなりません。ですから、私たちは隣人の体に害を与えたり、傷つけたりしてはいけません。そうではなくて、病気のときに隣人を助け、看病してあげるのです。
1.6. 第六の戒め
姦淫をしてはいけません。
問い これはどういう意味ですか。
答え 私たちは神を畏れ、愛さなければなりません。ですから、私たちは言葉においても行いにおいても、きよくあり、つつましやかでなければなりません。そして自分の配偶者を愛し敬うべきです。
1.7. 第七の戒め
盗みをしてはいけません。
問い これはどういう意味ですか。
答え 私たちは神を畏れ、愛さなければなりません。ですから、私たちは隣人のお金や所有物を奪ったり、詐欺によって得たり、貧弱に作られたものを売りつけたりしてはいけません。そうではなくて、隣人が財産や経歴を増し加えたり、守ったりできるように手助けしなければなりません。
1.8. 第八の戒め
隣人について、嘘をついてはいけません。
問い これはどういう意味ですか。
答え 私たちは神を畏れ、愛さなければなりません。ですから、私たちは嘘をついたり、裏切ったり、名誉を毀損したり、隣人の評判を落としたりして欺いてはなりません。そうではなくて、むしろ隣人について弁護し、隣人に関して良いことを言い、隣人がなすことの良い面を見るようにしなければなりません。
1.9. 第九の戒め
隣人の家を欲しがってはなりません。
問い これはどういう意味ですか。
答え 私たちは神を畏れ、愛さなければなりません。ですから、私たちは隣人をだまして遺産や家を奪おうとしたり、自分に権利があるような振る舞いをして奪い取ろうとしたりしてはなりません。そうではなくて、隣人が財産を保ち、さらに増し加えられるように手助けをすべきです。
1.10. 第十の戒め
あなたは、隣人の妻、男性の奴隷、女性の奴隷、家畜、そのほかどんなものであれ、隣人のものを欲しがってはいけません。
問い これはどういう意味ですか。
答え 私たちは神を畏れ、愛さなければなりません。ですから、私たちは隣人の牛を放したり、雇い人を奪ったり、妻を誘惑したりしてはいけません。そうではなくて、彼らが隣人のところにとどまりつづけ、それぞれの義務を果たすようにしなければなりません。
1.11. 結び
問い これらの戒め全体について、神様は私たちに何とおっしゃっていますか。
答え 以下が神様の語っておられることです。「わたしは主、あなたの神である。わたしはねたむ神である。わたしを憎む者に対しては、祖先の罪をその孫、さらにその孫にまで負わせる。しかし、わたしを愛する者に対しては千代に及ぶまで恵みを施す」
問い これはどういう意味ですか。
答え 神様はこれらの戒めを破る者をすべて罰すると警告を与えています。それゆえ、私たちは神様の御怒りをおそれるべきであり、これらの戒めに違反しないようにすべきです。しかし、神様はこれらの戒めを守る者には恵みとすべての良い物を約束してくださいます。それゆえ、私たちは神様を愛し、神様を信頼し、神様の戒めが求めることを喜んで行うべきなのです。
2. 第二部:使徒信条について
父親が家族に使徒信条を簡潔に示すには
2.1. 第一の記事:創造について